良かった。やらなければならないことを、先延ばししてしまい、罪悪感に駆られている人ほど見て欲しい作品。
大泉洋が演じる日高先生のキャラクター性が、漫画を読んだ時にできたイメージととても近かった。

ラストシーンになると他のお客さんたちも感動して涙していた( ;∀;)
主人公と先生が対峙するシーンがよくあった。
先生が亡くなるまでは正面を見ての対話だったが、ラストシーンでの対話では両者海を見ながらの対話。
先生は亡くなっているためか、自分の中にある先生と対話しているように見えた。
先生(大泉洋)は、主人公が美大に入学する前、とある約束を持ち掛ける。
それは、主人公が美大在学中に、先生と2人展をすること。
しかし、主人公は約束を守らない。それに対する後悔を懺悔したエッセイだった。
「描け」という先生からのエール
物語の節々に、主人公のナレーションと共に、「○○すればよかった」「この時の私を引っ叩きたい」など過去の行動を顧みた現在の心境が語られていた。

この主人公の心情には共感してしまう。
自分自身と約束したことでされ、先延ばしして、結局やることはない。
最初は罪悪感が残っていたのに、それを繰り返していく内に、それもどんどん薄れていく。
主人公も、大学在学中は友人たちと遊び呆けてしまい、入学前より絵が下手になってしまう。
それが原因で先生ともう一度対立してしまうシーンがあった。
ふと今までの自分を振り返ることがある。
すると、なぜあんなにも時間があったのに、もっと効率よく動かなかったのだろう。
寿命は有限なのにその時間を有効に活用できなかったと、後悔をする阿呆しか残らなかった。
今の苦しみから逃げ続けている。いずれ大きなしわ寄せがくると分かっていても行動するのも億劫になっていく。
そんな自分に対し、エールを送ってくれる作品だった。

「描け…描け描け描けっ‼」
先生はこのセリフを、主人公や生徒たちに口癖のように発言している。
主人公も何か理由を付け先延ばしにしてしまうシーンが、幾つも描かれている。
そして、いざ絵を描き始めると、その筆は止まらない。
今まで描けなかった不安も描いているうちは、その気持ちから切り離し、集中できている様子だった。
何事も“やり始め”が一番体力を用いると思う。
そして、やらずそのまま放置していると、とことん足をすくわれ、余計に身動きが取れなくなってしまう。
この「描け」は、エンジンをかけることだと思った。
いくら知識やエネルギーを蓄えようとも、エンジンがかからなければ動かない車と同じ。
動いてみて、今必要なことが見えてくる。それは本当に生きた言葉だと思った。